北志賀 フクベノ頭(1503m)、西ノ岩菅(1642.4m) 2016年4月9日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 5:53 五宝木橋−−6:09 高山沢、朝日沢合流点(長靴−登山靴履替) 6:23−−8:55 フクベノ頭(休憩) 9:21−−10:18 西ノ岩菅(休憩) 10:57−−11:45 フクベノ頭(休憩) 12:22−−13:30 高山沢、朝日沢合流点(長靴−登山靴履替) 13:47−−14:06 五宝木橋

場所長野県下水内郡栄村
年月日2016年4月9日 日帰り
天候
山行種類残雪期籔山
交通手段マイカー
駐車場林道路側に駐車
登山道の有無無し
籔の有無フクベノ頭までは7.8割が籔漕ぎで、フクベノ頭〜西ノ岩菅間は3割程度が藪漕ぎ。強固な藪は主に灌木と石楠花
危険個所の有無フクベノ頭〜西ノ岩菅間鞍部付近に痩せてガレた岩場あり。距離は5m程度なので注意して通過すれば大丈夫。ただし足元が崩れやすいので北側に転落注意
山頂の展望フクベノ頭、西ノ岩菅とも展望良好。ただし雪が無いとフクベノ頭は藪で展望無しかもしれない
GPSトラックログ
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コメント五宝木橋からフクベノ頭北尾根を利用して往復。尾根取付には朝日沢渡渉が必要で長靴で対応。水深は膝丈で場所を選べばそれほど急流ではない。2016年春は残雪が極端に少なく、フクベノ頭まではほとんど雪が残っておらず藪漕ぎが連続する。1490m峰〜西ノ岩菅の平坦な尾根区間は痩せて石楠花メインの激藪が続くが、傾斜がある区間は雪が残り藪を回避できた。もっと残雪が多ければもっと楽ができるが五宝木まで車で入れるかが問題となろう




五宝木橋。周囲はほぼ無雪 川原も雪は少ない
左岸台地を上流方向へ 車道を辿る
植林帯へ変わる 眼下の高山沢、朝日沢合流点へ急降下
山沢、朝日沢合流点 朝日沢を長靴で渡る
フクベノ頭北尾根末端。川に削られ半分崖状 東に迂回してよじ登る
尾根に乗ると杉植林 東端の尾根を登る
薄い笹で障害無し 標高970mで右から尾根が合流。熊の足跡あり
標高990m付近 標高1010m付近。徐々に石楠花登場
標高1030m付近。かなり太いワイヤー 標高1030m付近
標高1100m付近。ブナ林の個所はまとまった残雪 標高1190m尾根合流で残雪はいったん終了
標高1190m尾根合流。再び藪漕ぎ 標高1280m付近で再び残雪が登場
標高1340mで右からの尾根に乗るとまた藪漕ぎ 標高1360mから見た鳥甲牧場
標高1370m。石楠花が鬱陶しい 標高1450mで西斜面に残雪が登場。石楠花籔を迂回する
標高1460mからフクベノ頭までは快適な残雪が続く フクベノ頭の広い山頂部
フクベノ頭最高点 DJF氏が残したテープ。かなり劣化していた
フクベノ頭から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
フクベノ頭から見た西ノ岩菅 フクベノ頭を出発、南へ延びる尾根を下り始める
フクベノ頭〜1490m峰間は無雪期は灌木藪 灌木藪の大半は西斜面の残雪で迂回
1490m峰は北を巻いた 尾根に復帰
根元に空洞を持つアスナロ 鞍部付近は尾根が痩せた区間は雪が落ちて藪漕ぎ
藪は石楠花が中心。袖口付近が傷だらけになった 尾根上のガレ。長さ5m程度
再び藪に突入 人工的な切り口。他にも見かけた
標高1490m付近。西ノ岩菅がかなり接近 標高1500m付近から雪がつながりだす
標高1540m付近 標高1570m付近。傾斜が急
標高1580m付近。右から尾根が合流する 標高1610m付近
三角点があるはずの場所から最高点を見る 西ノ岩菅最高点
西ノ岩菅から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
山頂に赤テープを残すが今後目撃者がいるのかどうか・・・ 下山開始。往路を戻る
オゼノ沢は雪に埋もれている 鞍部付近で雪が利用できる場所は北側を迂回
やっと藪地帯を突破 フクベノ頭への登り返し
フクベノ頭到着。デポしたワカンを回収 フクベノ頭から下山開始
五宝木橋と集落。雪がほとんど無い フクベノ頭付近でも積雪は50mあるかないか
標高1340mで急斜面を下り右の尾根に乗り換える 標高1250m付近。また石楠花の藪
マンサクが開花し始め 標高1030m付近
標高970mで右折、尾根を乗り換える 植林帯平坦地は雪が残る
今回見かけた唯一の目印 急斜面を下って河原へ
デポした長靴に履き替える 朝と比較して増水した感じはなかった
対岸の急斜面を登る 左岸台地に出る
農業用?池が2か所ある 行きは鎖がかかっていなかった


 長野北東部に位置する栄村にはマイナーな山がテンコ盛りだが、その中でもフクベノ頭と西ノ岩菅は特にほとんど登られていない山だろう。地形図を見る限り最も使いやすい尾根はフクベノ頭から北に落ちる尾根だが、この末端は朝日沢と高山沢に挟まれていてどちらかを渡る必要がある。残雪の多い時期ならスノーブリッジが使える可能性があるが、今度は車でのアプローチが不可能になる。車で入れる一番近い場所は鳥甲牧場西側の五宝木集落だが、ここまで除雪が延びるのは例年だと大型連休の時期。ネットで検索しても登山記録はDJF氏の記録(クリックで記録へジャンプ)しか存在しない。山スキーの記録は皆無。まあ、地形図を見ればスキー向きの緩斜面は無いから仕方が無い。

 そのDJF氏は残雪期後、5月末に登っている。フクベノ頭北尾根から登ったが雪があったのはフクベノ頭山頂部のみで激籔漕ぎの末に西ノ岩菅山頂に立ち、帰りは藪を嫌って朝日沢に下ったが足を滑らせて水没の憂き目に遭っている。私が無雪期に濡れた激藪漕ぎの末に山頂に立ち、帰りは藪漕ぎを避けて山頂東の急な尾根を苦労して下った布岩山の状況に似ている。その布岩山はJDF氏が先週に残雪を利用して登っているが、今度はその逆の演出を考えた。実は候補地が2つありどちらにするか最後まで悩みに悩んだ。一方の山は長い林道歩きの関係で雪が少ない方がいいのだが、今年の残雪状況からすると例年より1カ月早くてもいいかと考えた。一方のフクベノ頭、西ノ岩菅は逆に雪が多いほどいいと思われ、今年の雪解けではもう藪が出てしまって時期を逸している可能性がある。もし行くなら早いほどいいが、幸い、先週のDJF氏のレポートで五宝木集落まで車で入れることが分かっている。藪が出ている可能性の他に沢の渡渉の問題もあり成功の確率はかなり低いと思われた。雪解けで増水した沢を渡れなければ、スタート直後で計画中止となる。悩むのも当然だ。

 2つの地図を準備していたが、家を出発する直前に五宝木行きを決断した。渡渉対策で久しぶりに長靴を用意。普通の長靴なので膝丈なので水没するかもしれないが、渡るときには裸足で長靴を履いて対岸でタオルで足を拭いて登山靴に履き換えれば問題ないだろう。問題は渡れる程度の流れの強さかどうかだ。フクベノ頭北尾根は傾斜が急で痩せた部分もあり、今回は12本爪アイゼンを準備。今週半ばに降った雨で先週の新雪は溶けたと判断、スノーシューではなくワカンを車に積み込んだ。もちろんピッケルは無条件に持っていく。

 先週の遠見山、台倉山からも見えたように鳥甲牧場内の車道はきれいに除雪されていて、ここにつながる上日出山集落まで除雪されている可能性がある。長野市から向かうならここが使えるなら秋山郷経由より格段に近くなる。カーナビに上日出山をセットして出発、飯山を通過して野沢温泉村、栄村と国道117号線を進んでも雪が無い。上日出山も車道脇にはほとんど雪が残っていない。そして車道にも雪は無かった。集落の外れで簡単な車止めがあったが通行止めの表示は無く、通過は可能と判断して手でどかして通過後は元に戻して先に進む。林道は完全に除雪され、路上には雪解け水が流れるが凍結は無し。登り切って鳥甲牧場に出るが先週のDJF氏の時とは異なりほとんど雪が消えてしまっている。右折してウネウネと高度を下げて秋山郷からの道に合流、五宝木へと進む。軽トラが止まった人家があったので、もう一部の住人は居住を再開しているようだ。さらに下って五宝木橋に到着、周囲には雪が見当たらない。こりゃ藪漕ぎかなぁ。もう少し進んで林道脇に平らな駐車余地を発見し、今夜はそこで仮眠した。満天の星空で明日も好天の予報だ。

 朝飯を食って五宝木橋に移動。DJF氏の情報を利用し最初から左岸側を進む。それも川岸ではなく人家のある台地を伝う。舗装された車道を進み、人家を過ぎると舗装が切れて雪に覆われた灌木帯で車道が終わる。締まった雪でほとんど沈まず、予想通り新雪は雨で溶けてしまったようだ。なおも進むと杉の植林へ。花粉が飛んでいるのが鼻で分かるが関東よりも花が少ないので助かる。

 左手の沢は数10mの下にあり、見下ろすと2つの沢が合流する地点が見えた。それが朝日沢と高山沢の合流点だ。雪は無いがピッケル併用で急斜面を注意深く下って川原に下り渡れそうな場所がないか確認。もしここで渡れなければ計画はご破算だが、幸いにして朝日沢の水量はそれほど多くなく、靴を濡らさないで渡るのは不可能だが場所を選べば流れは弱くて深さは膝丈程度、安全に渡れそうだ。裸足になって長靴に履き替えザックに登山靴を入れてジャブジャブと朝日沢を渡る。左足に少し水が入ったが少量で冷たさも感じずに済んだ。長靴の効果は大きかった。対岸で濡れた足を拭いて靴下を履き直して登山靴へ。川原より一段高い雪原に長靴とタオルをデポして再出発。

 地形図には表現されていないが、尾根の末端は2つの沢で削られたのか河岸段丘のように急斜面で上部は根曲がり灌木藪だ。真正面から登るのは面倒なので東へ迂回してみる。そちらも急斜面だが正面よりマシで藪が比較的薄い場所があり、雪を使える場所は雪の上を歩いて高度を稼ぎ、最後は雪が消えて根曲がり灌木の急斜面をよじ登って傾斜が緩んだ台地状の尾根に乗る。そこは杉の植林帯であった。傾斜が緩むと雪が現れるが日当たりの悪い植林なので雪の締まりは悪く、雪の無い地面を選んで進んでいく。やがて台地東縁に尾根形状が現れるのでそこを登っていく。尾根上は雪は無く薄い笹が蔓延るが、まだまだ藪漕ぎのレベルではない。

 急登して標高970mで右手から太い尾根に合流、帰りはこちらに引き込まれないよう要注意か。でも間違って進んでも尾根末端に近いので朝日沢沿いに下れるかも。合流点には雪が残り熊の足跡も残っていた。DJF氏が登った時はあちこちに熊の新しい足跡があったそうだが今回は時期が1ヵ月半早いのでどうだろうか。

 残雪があるのは合流点の一角だけで、その先の尾根上には雪は見えず笹と灌木藪だ。植林はここで終わってこの先はブナの自然林だ。残雪にありつけるのはどこまで登ればいいのだろうか。尾根上には踏跡は無いが今のところの藪は笹が中心で乾いていれば問題なし。標高1000m付近で尾根上はブナから針葉樹(五葉松やアスナロだと思う)に変わると石楠花が登場するが長続きせず密度もそれほどではなく、それほど大きな障害にはならなかった。標高1030m付近では太い立木に太いワイヤーが巻きついていた。

 標高1080mの平坦な尾根付近から植生が再びブナに変わると残雪が見られるようになり、標高1190mの尾根合流点直下まで締まった雪が続いて快適な残雪歩きだった。これを期待して残雪期に山に入っているのだが今年は豪雪地帯でも残雪は既に残り少ない。DJF氏が苦労した石楠花籔はもう顔を出しているだろうか。

 標高1190mの尾根合流に達すると再び雪が消えて背の高いアスナロの下は笹と石楠花に切り替わる。帰りは合流した尾根に引き込まれないよう要注意。またもや藪漕ぎで尾根を進んでいく。標高が低い所よりも石楠花の強度が上がっている。

 標高1230m付近から尾根幅が広がって西斜面に残雪が現れるのでそちらをトラバースして石楠花を避けて進み、尾根がバラけて広がるとブナ林に変わって広範囲で快適な残雪斜面に切り替わって残雪期らしくなる。標高1340mの尾根合流直下は急傾斜で、最初は薄い雪が張り付いた部分を登ったが滑ると止まらなさそうなので、藪が混じった尾根左端付近をルート選択。ピッケルを利用しつつ根曲がり竹や潅木にも掴まりながらよじ登った。

 標高1340mで右手から顕著な尾根が合流、というか今登ってきた尾根が合流すると表現するのが正しい。下りでは注意しないと向こうの尾根を直進することになるので、近くの立木に赤テープを巻いて「→五宝木橋」と書き残した。この先は尾根幅が狭まり植生はブナからアスナロの大きな木に変わると同時にまたもや石楠花が登場だ。今度は少しばかり手強く体ごと突っ込むことが多い。左右の斜面は急で雪は無く藪が回避できない。おそらくここは早い時期に雪が落ちてしまう場所だろう。

 石楠花の尾根を登っていくと標高1440m付近から右斜面(西側)に残雪が登場するようになりそちらをトラバースして石楠花を回避するが、まだ雪が続かず時々石楠花尾根に戻る。しかし徐々に残雪が増えてきてトラバースが連続してできるようになり、標高1460mで尾根幅が広がると待望のたっぷりの残雪にありつくことができ、石楠花から開放された。おそらくフクベノ頭までこのまま楽しい残雪歩きだろう。植生は再び明るいブナに変わった。やはりアスナロ樹林は雪が無い藪尾根の目印らしい。

 締まった雪を踏みしめて明瞭な尾根を登っていく。背中にはワカンを背負っているが出番は無い。12本アイゼンもここまで出番無しだ。尾根が右に曲がると山頂は間近。そしてフクベノ頭の広い山頂部に到着。

 山頂は背の低いブナが点在する程度で展望がいい。もちろん今は積雪により足元の高さがかさ上げされているのでその効果もあるだろう。南の奥には真白な鳥甲山。南西にはまだ白さが残る西ノ岩菅が比較的近くに見えている。ただし、ここから南に見えている1490m峰から西へ続くなだらかな尾根はブナではなく緑色のアスナロに覆われている。今日の様子からしてあそこは雪は無く石楠花藪漕ぎだろう。ほぼ無雪期に登ったDJF氏の記録にもそう書いてる。雪が残るのは西ノ岩菅の登りに入ってからだ。反対側は鳥甲牧場だが、先週とは大違いでほとんど白さを失っている。高倉山も同様だ。この1週間で雪解けが進んでいる。

 最高点の僅かに西側の枯れ木の根元しか残っていないものに黄色のテープが巻かれていた。DJF氏が残したものだが紫外線による劣化が進んで柔軟性を失いかけていて、数年のうちに千切れて地面に落ちてしまうだろう。私は近くのブナの幹に赤テープを残したが、これも数年の命だろう。

 山頂でDJF氏の記録を読みながら休憩。日向では暑いくらいなので、日影には頼りないが矮小なアスナロの影に入り、顔が日焼けするのは確実な天気なのでここで日焼け止めを塗った。DJF氏が登ったときは藪で尾根のつながりが見えなかったそうだが、今は雪が乗った1490m峰へ繋がる尾根がしっかりと見えているので間違える心配は皆無だ。これだけ雪があれば1490m峰までは藪漕ぎの心配は無いだろう。

 出発前に不要な荷物をデポすることに。ワカンと防寒用手袋、それにお茶500ccだ。今回は水分を1リットル持ち上げたが、ここから西ノ岩菅の往復なら半分の500ccで問題なかろう。雪も残っていることだし。アイゼンをデポするか悩んだが、念のために持って行くことにした。

 休憩を終えて南に伸びる尾根に向かう。最初は幅が広く充分な残雪があったが、尾根が痩せると雪庇の溶け残りが藪の上に載っているだけとなり、それも徐々に細くなり消えてしまう。尾根上は新潟でよく見るタイプの矮小な潅木藪で、石楠花よりはマシだが笹よりずっと強固だ。たぶんマンサクが主役だろう。DJF氏が苦労するのも当然だ。幸い、今の時期は尾根の右側斜面(西側)に残雪があり、潅木藪を少し下っただけで残雪をトラバース可能となり藪を回避できた。おそらく無雪期の西側斜面は笹藪だろう。

 尾根が太くなると再び残雪が全体を覆うようになり背の高いブナが復活する。1490m峰は北側斜面の傾斜が緩いし雪がたっぷりと残っているのでトラバース。尾根に復帰して少しの間は尾根上を歩けたが、やがて尾根直上はアスナロと石楠花に覆われるようになる。まだ北斜面の傾斜がゆるい間は北側の残雪でトラバース可能だが、傾斜がきつくなると尾根上に追いやられ石楠花との格闘開始だ。ここは尾根が細いので左右に逃げることができず、背丈を越える石楠花に突っ込むしかない。アスナロは根元が曲がって「石室」ならぬ「木室」になっていることも。人が入って雨露をしのげるくらいのスペースがある。石楠花の藪漕ぎで両腕袖口付近は引っかき傷だらけになってしまった。先週の快適な残雪歩きとは反対の世界だ。

 石楠花の他に栂や五葉松が混じり地面付近から横に枝を伸ばしているのでこれも始末が悪い。でも中にはその横向きの枝が根元から断ち切られているものがあり、その平面の切り口を見る限り人の手で枝を落としたのは間違いなし。数本の木でそのようなきれいな切り口を見たので確実だ。ただしそれは大昔の話で、長い期間に藪が延びて今の状態になったのだろう、

 突如として藪を突き抜けて明るく開けた場所に出ると両側が切れ落ちた足元がザレた細い岩場に変わる。距離にして5mほどなのでそれほど恐怖心は湧かないが、風化して崩れやすい岩なので注意して通過する。

 この先もまだ石楠花とのお付き合いが必要だったが、平坦区間が終わって尾根幅が広がり登りに変わると同時にブナ林に切り替わり石楠花とはおさらばだ。雪が少なく潅木が出ている部分もあるが、今までより格段に歩きやすい。傾斜がきつくなると藪の出ている度合いが増えて右手の残雪斜面を迂回したくなるが、傾斜がきつく滑るとそのまま滑落しそうなので素直に藪に掴まりながら進む。

 標高1590mで右からの尾根に合流して傾斜が緩むと雪庇状の雪が残るようになる。帰りはこの尾根を直進しないよう注意が必要だ。今は落葉して先が見えるからいいものの、藪で周囲が見えないと分岐は分かりにくい。緩やかに登ると藪が消えて一面の残雪に覆われるようになり、最後の登りは快適だ。傾斜が緩んで肩に到着。地形図上ではここが西ノ岩菅三角点のある場所だが東斜面は雪が落ちているものの尾根上は雪庇が溶け残っていて1m程度の雪に覆われている。残念ながら三角点を目にすることは不可能だ。ここより50mくらい先に微小ピークがありDJF氏もそこを山頂としているので先に進む。今は藪は全て雪の下で快速到達だ。

 西ノ岩菅山頂は利根水源山脈(上越国境)の山のように細くて低い潅木に覆われるだけで展望がいいピークだった。僅かに残雪が残りカモシカの真新しい足跡も残されていた。真正面には真白な鳥甲山。それに続く尾根は大部分はブナ林で雪が乗っているが、一部にアスナロと思われる緑色に覆われていたので、これまでの経験からして雪が落ちて石楠花藪と思われる。鳥甲山から往復してもあまりお得ではなさそうだ。右手には先週登った遠見山から台倉山、そして昨年秋に登った三ッ山。あの時は藪で手首がかぶれて酷い目にあったなぁ。先週DJF氏が登った布岩山も西斜面の雪は少なく、さほど時間をかけずに藪が出てしまうだろう。昨年秋に登った飯盛山などは全く雪が見えない。今年は本当に雪解けが早い。

 帰りは下りとは言え藪漕ぎで体力を消耗するので山頂で休憩。日差しが暑いがここは立ち木が無いので日影が無いので日差しに焼かれながらの休憩だった。つば付きの帽子も持ってきてよかった。上空には薄い雲が出てきたが僅かに日差しを和らげる程度のごく薄い雲だった。

 下山開始。雪の残る場所の下りは速いが、水平移動の藪突破の苦労と時間は往路と変わらない。残雪にあり付き、往路同様に1490m峰は巻いてフクベノ頭へ。ここでも休憩してデポした荷物を回収。当然ながら他に登ってきた人の足跡はなかった。今回は山頂では熊の足跡は見当たらなかった。もう冬眠から覚めていると思うが、まだ麓の辺りで餌を探しているのだろう。

 フクベノ頭からの下りは尾根分岐が何箇所かあるので要注意。今回は天気がいいし肝心な場所ではそこそこ見通しが得られて尾根の続き具合が見えたので読図に苦労することはなかった。残雪に残った自分の足跡もいい目印だった。ただし下れば下るほど雪が減って自分の足跡が見つかる頻度も減るので若干不安を感じなかったわけではない。でもいざとなったら最終兵器の地図無しGPSがあるし。

 970m肩の僅かに残った残雪で右の小尾根に乗り直せばもう尾根の屈曲は無い。杉の植林帯に変わり鼻水を垂らしてくしゃみを連発しながら杉林を通過する。これでも関東の杉の木と比較すれば花の数は格段に少ない。

 急斜面を下って朝日沢の河原へ。朝と比較してどのくらい水量が増えているのか心配だったが、見た目では朝と変わった様子は無く安心して渡れる。長靴に履き替えて浅瀬をジャブジャブと渡って対岸へ。帰りは両足とも少し水が入ってしまったが、膝丈の長靴のおかげで冷たい雪解け水に直接肌が触れる時間は非常に短く、靴を脱いで裸足で渡渉するより比較にならないほど快適だ。

 対岸で登山靴に履き替え、半分崖のような急斜面を攀じ登って左岸台地へ出る。朝より雪が緩んで多少沈むが残雪量が僅かなので足への負担も小さかった。そういえば今日はワカンの出番もアイゼンの出番もなかったなぁ。今シーズンはまだ12本爪アイゼンを一度も使ったことがない。たぶんスノーシューはもう出番はないだろう。

 舗装道路に乗って駐車した道へと下っていくと、入口近くには朝にはかかっていなかった鎖が道を塞いでいた。先ほど通過した人家はまだ雪囲いがされたままで今シーズンは人が入っていないようだったが、様子を見にきているようだ。まだまだ通行する車両は少なく、車で横になっている間に通過したのは数台の軽トラだけだったので五宝木の住人だと思う。

 五宝木橋に到着。着替えて抗アレルギー薬を飲んで花粉症用目薬をさして車内でしばしお昼寝。まだブナが芽吹いておらず道端でも日差しがあって暑いくらいだった。

 帰りは極野方面へと林道を進んでみた。このルートは数年前の大型連休では国道117号線から極野集落までは入れたが、そこより先は未除雪で入れなかったが、今年は雪が少ない影響か全線除雪が完了していて極野集落まで通行可能だった。ということは現時点で五宝木に入れないのは前倉集落経由くらいしかないらしい。例年だとどの路線を優先して除雪するのか知らないが、屋敷経由辺りが一番可能性がありそうな。


 まとめ。今年は残雪が少なくて4月半ばも早い時期に五宝木まで車で入ることができてアプローチには苦労しなかったが、山の残雪も少なくて結構な藪漕ぎとなってしまった。雪が多い方が藪を回避できる距離が長くなるはずだが、今度は五宝木まで車で入れるかが問題となろう。五宝木まで車で入れるようになった直後に登るのがベスト。DJF氏は朝日沢を飛び石で渡ったそうだが残雪が多い時期だと水量が多くその手が使えない可能性もある。水に入って渡る準備はした方がよい。場所を選べば水深は膝程度で流れは穏やかで水流で人が押し流されることはない。なお、今回も遭遇した石楠花帯は地形的なものが原因で早期に雪が落ちてしまう場所なのは間違いなく、例年の残雪期でも藪漕ぎの可能性が大だ。覚悟して出かけよう。

 

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